自分が小学校くらいまでによくつれていってもらった中華料理屋があった。

 我が家は正直言って貧乏家なので、周りの人間が一ヶ月どれくらいの割合で外食をしているのかを聞いてびっくりした事があった。

 3ヶ月ごとの外食は決まってその店だった。

 店の前にくると、いつでも香ばしい匂いがしていた。たぶん匂いだけでもその店にきた事がわかると思う。餃子を焼く匂い。スープの匂い。炒め物の匂い。その匂いの近くで席が空くのを待つことはなんて残酷な。ということもよくあった。

 入り口を入るとカウンター席が十席と四人がけのテーブルが2つ。よくある朱色の丸いテーブル。自分の好きな席は、大将の手つきが見える席。当時西手は珍しく、今風に言うオープンキッチンにしてた。

 メニューを選ぶときがそれこそ幸せな悩み。ここで選択を誤れば次のチャンスは三ヶ月後。

 「ネギラーメン」はいまだ自分の中では最高のラーメン。あの油の匂いは嫌が応でも、意識をラーメンに集中させる。麺は細麺。スープとのバランスも最高。スープの味はうまみ、塩分、からさ、どの角度からみても欠点がなく。ネギの甘味。触感。食べ終わったときの達成感。思い出すだけでもよだれが…。「ネギラーメン」は大人気だったので兄弟でかわりばんこだった。

 「天津飯」にするか「天津麺」にするか?「中華飯」にするか「チャンポン」にするか?小学生最大の選択が訪れる。

 それぞれの注文+餃子+チャーハンを頼むのがお決まりのコース。注文が終わって料理が運ばれるまでは、大将の動きをみつつ漫画タイム。
 リズミカルに同じ形の餃子ができていくさまとか奥さんに怒鳴ってる姿とかなべを振る姿とか…。動きにぜんぜんムダがないなーって子供ながらにみてた。

 料理がでて、半分くらい食べると「天津飯チョーダイ」とか交換タイムが始まる。

 食事も終盤になってくるとお見上げの「餃子」+「にんにくの茎いため」をたのむ。お店には車で来ていたので帰ってから父親が一杯やるためのもの。帰ってきてビールを飲む横からつつくのも楽しみだった。

 ある日、その店は突然休業した。大将がなくなったのだ。

 それ以降、家族ではあまり外食しなくなった。

 いまだにその店以上の店は見つけられずにいる。

 不乙

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